チーム完熟 の【完熟お見舞い、申し上げます】
既婚、未婚、子あり、子なし、シングルマザーとバラエティに富んだ編成のコピーライター集団「チーム完熟」。酸いも甘いもかみ分けてきた40代~50代の4人が人生の後半にさしかかり、訪れた心身の変化に向き合う奮闘記【完熟お見舞い、申し上げます】。同世代の読者が抱えるモヤモヤした気持ちを少しでも明るく照らせますように!
前回までのお話。
10年以上悩まされている手のかゆみ(主婦湿疹)の原因が、銀歯による金属アレルギーではないかという疑いから、清水の舞台から飛び降りる覚悟で、銀歯をすべてジルコニアに変えるカード決済をしました。
しかし、治療開始初日に提案されたのはそれとは全く別件のインプラントでした。
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治療開始日。
改めて口内をチェックしてもらい、これからの治療について説明を受けました。
そこで歯医者さんに指摘されたのが、奥歯についてでした。
「マスカットさん、左上の奥歯1本ないですよね?」
「あ、はい……。」
そうなんです。
この診察から遡ること数年前。
近所の歯医者さんで、奥歯を抜歯していたのです。
該当の奥歯はそもそも銀歯で(そこもかよ!)状態が良くなかったこともあったのですが、離婚後のストレスで就寝中に歯を噛み砕いてしまい、さらに瀕死の状態に陥っていたのでした。
一説によれば奥歯の噛み締めは最大100キロに達するひともいるらしく(※)、離婚前後のストレスはまさにそれに匹敵するレベル。
毎晩これでもかというほど歯を食いしばっていたようで(自覚はないけど朝起きると眉間に深いシワが刻まれている)奥歯は砕けるわ、顎関節症になり口が開かなくなるわで大騒ぎの時期でもありました。
そんな暗い時代をなんとか頑張り続けてくれた奥歯くんですが、マスカット42歳の年にいよいよ力尽き、サヨナラとなったわけです。
当然ですが、抜いたらそのあともケアしてくれるのが歯医者さんというものです。
一般的に歯を失った場合、いくつかの選択肢があります。
1・ブリッジ
ブリッジとはその名の通り、失った歯の両隣の歯を使って橋渡しのように人工の歯を作る治療です。入れ歯ではないのでがっちりと固定されるのがメリットですが、両隣の健康の歯を削る必要があるのがデメリット。なぜなら削られた健康な歯は寿命が短くなってしまうからです。
2・入れ歯
「部分入れ歯」です。歯のない部分の型をとり、人工歯茎に義歯を取り付けて固定します。ブリッジと違い、健康な歯を削る必要はありませんが、噛む力が弱くなる、取り外して洗浄する必要があるなどのデメリットがあります。
3・インプラント
人工歯根(インプラント)を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を取り付けます。健康な歯を削ったり、洗浄する手間も掛かりません。
で、一般論から私の話に戻りますが。
1のブリッジについては、失った歯の両隣に歯がなければできません。
つまり奥歯には使えないってことになります。
となると、選択肢は2つ。
入れ歯か、インプラントか。
イーーーヤーーーァァァァーーーーーッッ!!!
歯医者さんの説明を聞きながら思わず叫びそうになりました。
ってゆうか、入れ歯って、もうなんかおばあちゃんじゃん!
洗浄? 寝る前に取り外す?
当時マスカットにはお付き合いしていた彼がおりまして。
10歳年下だったので32歳。
待って、待ってよ、マスカット。
彼との旅行を考えてみなさいよ。
色々いい感じのことをいたした後に、部分入れ歯取り外すの?
化粧ポーチにポリ●ントとかポリ●リップSとか、入れてもってくの?
なんなら彼に
「マスカットちゃん、お口くさーい」
とか言われちゃうんじゃないの?
グファァァァッッッ!
考えただけで吐血しそう。
いや、すでに歯茎から血が出てたと思う。
いや。
本質的には歯が一本どうなろうがそんなこと関係ないのです。
ありのままで愛されればいいんですよ。
だがしかし……。
マスカット42歳、まったく腹が括れなかった。
恋の障壁は少ないほうがいい。
となれば、インプラント一択です。
芸能人とか審美目的で健康な歯を抜いて手術したりしますからね。
まして奥歯のインプラントなんて、ぜんぜん問題なし!
しかしながら問題は別のところにありました。
私は売れっ子の芸能人ではなく、単なる貧しきシングルマザー。
インプラントには保険が効かないので、少なくとも20万円は用意する必要があります……。
抜歯してくれた当時の歯医者さんから丁寧な説明をしてもらい、
私はこう答えました。
「……わかりました。考えておきます。」
そして結論を出せないまま数週間が経過しました。
おや、待てよ。
奥歯が一本なくなっても別に生活に支障ないよね?
実際食事も普段と変わらずできるし、誰にも気づかれることもないし。
このまま奥歯なしで平気なのでは?
同じように考える患者さんは多いのでしょう。
「考えておきます」と伝えた診察の帰り際、歯医者さんはこうもおっしゃっていました。
「このまま抜けた奥歯を放置しておくと下の歯がせり上がってきて、最終的には下の歯も抜けてしまいますからね」と。
出る杭は打たれると言いますが、
歯もまた上下で打ち合っているということらしいのです。
上の歯がなくなったことで、下の歯が調子に乗って伸びまくり最後は抜けてしまう。
奢れるものはひさしからず。この世の摂理ですなぁ。
でもまぁ、すぐにどうなるってこともあるまい。
なーんて人ごとのような感じで放置すること数年。
そしてここに来て、他の歯医者さんからも指摘されたというわけ。
てへぺろ。
ってな感じでヘラヘラ笑ってみたのですが、
口内の様子を鏡で確認しろと言われギョッとしました。
下の歯が伸びてきてるっっっ!
たった数年で、下の歯、調子に乗りまくりじゃん!
近所の歯医者さんは優しかった?ので、
定期検診の際も「ちょっと今はまだ……」と貧しさを理由に決断しない私を生暖かい目で見逃してくれていたようです。
まさかこんなに早く、下の歯が抜ける未来が近づいてきているなんて。
この日、現実を突き付けられたのでした。
「奥歯、どうしますか?」
再び突きつけられた二択。
入れ歯か、インプラントか。
数年前と同じ妄想が頭をよぎりました。
ちなみにこの時、奥歯を失った当時の32歳とはお別れ済み。
ですが、その後におつきあいを始めた今彼は2歳年下。
10歳年上だったりすれば、いちゃいちゃしたあとはふたり仲良く洗面所で
「私のポ●デント使う?」もありなのかもしれませんが……。
「イ、インプラント、おいくらでしょうか……」
「21万円です」
エイヤーッーーー!
清水の舞台再び。
こうなったらもう徹底的にやってやる!!
力強くカード払いを宣言したマスカットでした。
つづく。
(※)参考サイト:船曳歯科クリニック Doctor's Blog
https://www.funabiki-8020.com/blog/archives/973
※一般的に歯を失った場合の治療には、いくつかの選択肢があります。日本歯科医学会の標準治療をご参考ください。
https://www.jads.jp/guideline/