更年期・プレ更年期・アフター更年期世代女性の今日と未来の健康を考えるWebメディア「カンテラ」
2022.05.23コラム真貝 友香

【シネマと女とワインを一杯】chap.5 ジェニファー・ロペスは止まらない ~いつだって最新が最高~

その昔、Chick Flick=“女性観客をターゲットにした主に恋愛やロマンスを扱う映画”という言葉を教えてくれたのは米国生活を経験した映画好きの知人だった。そのコノテーションは往々にしてネガティブで、つまりは蔑称であり、昨今はあまり使われない言葉でもある。 全ての女性が常にロマンティックラブイデオロギーに支配されているわけがなかろうが!という考えも浸透しているだろうし、その旨はもちろん100%同意だが、何を隠そう(隠していないけど)Chick Flickやロマンティックコメディというジャンルが大好きな私。なかなかロマコメが誕生しない現状を少し残念にも思いつつ、ジェニファー・ロペス(以下、J.Lo)の最新主演作「マリー・ミー」がゴキゲンな良作でとっても嬉しくなってしまった。

ロマコメ常連女優のプライベートは映画以上にロマンチック

女優、シンガー、ダンサー、映画などのプロデュース業、愛称を冠したコスメやアパレルブランドを営む実業家…どのイメージが一番強いかはもちろん個人差もあると思うが、目下J.Loのトピックといえば何といっても恋人ベン・アフレックとの「再」婚約に尽きるだろう。
毎年、アカデミー賞授賞式の前夜に「最低」の映画を選んで表彰するゴールデンラズベリー賞、通称ラジー賞で最低作品賞を始め7部門を受賞、史上最多ノミネート作品でもあり、ハリウッド史上最も不名誉な作品として今もなお語り継がれる「ジーリ」。本作品での共演がきっかけで交際をスタートした2人は「ベニファー」と呼ばれ、婚約までしたものの2004年に破局。お互い別のパートナーと家庭を設けたが、それぞれシングルになった2人は2021年に復縁し、先ごろ2度目の婚約に至った。ゴシップ愛好家でなければ「知らんがな」の一言で済んでしまう話だが、「泡風呂に入っているときに、彼が膝まずいてプロポーズしてくれたの」と事の顛末を公式サイトのビデオメッセージでご丁寧に報告する彼女のうっとりとした表情に「知らんがな」も「勝手にやってくれ」も通り越して拍手喝采だ。バカップルだとか痛いとかお騒がせだとか野次はこの際どうでもよい、このシチュエーションに見合うのはJ.Loしかいない、ロマコメを地で行けるのは彼女以外いないのだ。

「綺麗なおねえさん」では済まなかった衝撃のミュージックビデオ

私がJ.Loを初めて認識したのは1999年の夏、当時しょっちゅうMTVで流れていた「If You Had My Love」のミュージックビデオだった。若い男性がブラウザの検索窓に「Jennifer Lopez」と入力するとスクリーンにJ.Loが現れ…という何ともインターネット黎明期を感じさせる演出で今見るとなかなか味わい深い。「Who’s that girl?」と言わんばかりに若者も幼い女の子も皆が気になるホットな彼女をフィーチャーしたビデオを初めて見たときは、へーこんな人が出てきたのか、すごく綺麗だなあと見入ってしまった。白いトップスとボトムスでセンターパーツにしたロングヘア―をなびかせているビデオの冒頭では「ちょっと歌えて踊れる綺麗なおねえさん」程度に捉えていたのだが、途中で突然曲のトーンがハウス調に変わり、タンクトップにカーゴパンツでバキバキに踊りまくるシーンで「ちょっと、この人何者!?」と度肝を抜かれてしまった。プエルトリコ系アメリカ人の両親のもとに生まれた彼女はジャネット・ジャクソンのバックダンサーを務めたこともあると知ったのはそのすぐ後、「道理で…」と納得。そこから20数年、ミュージシャンとしても女優としてもトップスターの座に君臨しているのはもちろん、定期的にゴシップで賑わせてくれることもあって、私は常に彼女が好きだ。

好感触な「マリー・ミー」とJ.Loは素敵なんだけど…な「ハスラーズ」

最新主演作「マリー・ミー」で演じた世界的歌姫カットは、J.Lo本人そのまんまな役どころ。同じくスーパースターの婚約者バスティアンとの挙式直前に彼の浮気を知り、失意のままステージに上がった彼女は観客の一人だった数学教師チャーリー(オーウェン・ウィルソン)を「この人と結婚する」と指名し、結婚を前提に関係がスタートするというあらすじだ。シンデレラストーリーの逆バージョンは「ローマの休日」「ノッティングヒルの恋人」、あとカンテラ世代が大好きであろう「やまとなでしこ」などロマコメの定番でもある。
キャッチコピーは「全世界騒然、スーパースターと平凡な男のギャップ婚」だが、察しの良い方なら映画を見るまでもなく、どういう結末かは読めるだろう。至極順当なラブストーリーの王道が繰り広げられる。事実、私が予想した展開はすべてその通りになった。
ウェディングドレスを身にまとったJ.Loが全面に押し出されたピンクでキラキラのポスターは申し訳ないが洗練されたデザインとは言い難く、このピンクでキラキラを敬遠する人も一定数いることは承知している。しかし、かつてラジー賞にも輝いてしまったロマコメ常連女優としての自分をメタ目線で面白がれる境地まで到達しているのだと実感したし劇中の彼女は本当に可愛くて魅力的。王道とは言ったものの、要所要所でディティールはアップデートされており(アップデートされていない部分も多分にあるがそれはご愛敬)、こういうほっこりするものが久しぶりに見たかったんだよなととても満足した。

J.Loを語る上で欠かせないのは、体作りに対するストイックかつ真摯な向き合い方だ。
現在進行中でステージに立ち続けているし、2020年に同じくラテン系の歌姫シャキーラとともに出演したスーパーボウルのハーフタイムショーでのパフォーマンスはまさに圧巻。ポールダンスしながらの生歌には唖然とするばかりだ。2019年の映画「ハスラーズ」ではストリッパー役だったため、ここでもポールダンスのシーンがあるのだが、片手でポールをつかみ、ぐるぐる旋回してみたり宙返りしたり180度開脚したりと「体幹と筋力と柔軟性どうなってんの!?」と呆気に取られてしまう。衣装も布というかほぼ紐なのでバストもお尻も大事な部分が隠れている以外ほぼ丸出しだが、不思議と助兵衛心が動かず、ただただその迫力に飲み込まれてしまう。
ただし、お話はかなりイマイチ…。リーマン・ショックで自分たちのクラブが打撃を受けてしまったために、その後も裕福に暮らしているウォール街の金融マンたちから大金を騙し取るという展開にどうしても好感が持てずにいる。それでもJ.Loのポールダンス及び美しい体を見るだけでも十分価値があることは強調しておきたい。

彼シャツが物語る鍛え抜かれた体の説得力

海外セレブの間では「Belfie」(Butt=お尻、Selfie=自撮りを合わせた造語)といってお尻にフォーカスした自撮りが流行し始めてから数年経つ。皮切りとなったのはキム・カーダシアンだが、ケンダル・ジェンナー、ベラ・ハディッド、ヘイリー・ビーバー、デュア・リパ…Instagramにベルフィーをアップするのは今やバカンスシーズンの風物詩にもなった。ワークアウトの成果と華やかなプライベートを垣間見られる瞬間だが、お尻といえばJ.Loが一番すごいなと思ってしまう。あくまでも好みの問題だが、彼女の周りには重力はないのだろうかと思うほどに垂れる気配もないし、ボリュームも張りも曲線美も素晴らしい。
自身のトレーニングやエクササイズについてもよく言及しているJ.Lo。常に最新のメニューを取り入れているようだが、以前読んだインタビューでは自宅の専用ジムで始めに腹筋、ケーブルクランチ、20キロのプレートを抱えてのシットアップを各50回ずつこなし、それを数セット、そのほか有酸素運動やダンスのセッション、ヨガなどが続き、あまりの参考にならなさ具合に笑ってしまった。そもそもほとんどの一般人は自宅に専用ジムがないので基準から違うのだが、食事面でも加工食品やカフェイン、アルコールは極力取らないらしいし、プロフェッショナルとしての矜持や覚悟が尋常ではない。真似できそうなのは水を飲みまくることくらいだろうか。

「マリー・ミー」では役柄もあって劇中で煌びやかなステージ衣装やドレス姿がたくさん見られる。しかし、ご自慢のボディラインを強調する露出度の高いアウトフィットよりも、ヨガウェアのハーフトップから覗く締まった腹筋や、チャーリーと一晩過ごした翌朝、羽織っているオーバーサイズのシャツ(いわゆる彼シャツというやつ)からすらりと伸びた脚、パンと張った太ももから締まった足首へのメリハリあるラインが一番カッコよくて、肉体の雄弁さと説得力を思い知ってしまった。
数あるミュージックビデオの中でも特に好きな「Get Right」、ここでも彼女は色んなスタイルを見せてくれるのだけど、裾をたくし上げたグレーのTシャツとメタリックなパンツで踊りまくる姿が一番輝いているので、出で立ちがそっけなければそっけないほど、体の美しさが際立つのは真理かもしれない。

「ダンスは私の人生の大部分を占めている」「ちょっと落ち込んでしまったときはとりあえずダンスする」とも語っていたが、彼女のビューティーも強靭なメンタリティも日々の積み重ねの他ならない。
デビュー当時と比較するとここ数年の彼女は相当パンプアップしたようで、一回り、二回り大きく見えるが、今の方が断然素敵だなとも思う。以前はお尻に保険を賭けているとよく噂になっていたけど、最近はどうだろうか。
完全にBack to normalした感のあるハリウッド、この夏はセレブたちも盛大にバカンスやパーティを楽しむこと間違いなしだけど、パパラッチたちもJ.Lo及びベニファーの一挙一動を待ち構えているはずだ。7月は彼女の53歳の誕生日も控えているので、見事なベルフィーや、ベニファーのツーショットが拝めることを私は今から楽しみにしている。

「マリー・ミー」
https://www.universalpictures.jp/micro/marry-me

真貝 友香(ライター)

ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。
妊娠出産を機にフリーライターとして活動。子育て、教育、キャリア、テクノロジー、フェムテックなど幅広く取材・執筆中。

「真貝 友香」の記事一覧