チーム完熟 の【完熟お見舞い、申し上げます】
既婚、未婚、子あり、子なし、シングルマザーとバラエティに富んだ編成のコピーライター集団「チーム完熟」。酸いも甘いもかみ分けてきた40代~50代の4人が人生の後半にさしかかり、訪れた心身の変化に向き合う奮闘記【完熟お見舞い、申し上げます】。同世代の読者が抱えるモヤモヤした気持ちを少しでも明るく照らせますように!
こんばんは。マスカットです。
先ほど深夜のコンビニに出かけたら、突然の雨。
首筋にツツーッと水が滴り、不意に十数年前の出来事を思い出しました。
40代の女性で、仮に友人Mとしておきましょうか。
彼女の旦那さんが倒れたという連絡を受けたのは、バケツをひっくり返したような生ぬるい大雨の夜でした。
彼女は、いわゆる恋愛体質。
いつ会っても好きな男の話を聞かされます。
お付き合いをはじめたら1年以上は続くから、別に取っ替え引っ替えってわけじゃないですが、学生の頃から、いつでも恋をしてる。
彼女はよく、こんなことを言ってました。
「自分で言うのもなんだけど、私ってあげまんだと思うのよね」
【あげまん】一緒にいる男の運気を上げる女性のこと。
「でもなんか下品!笑 だから座敷わらしと言いたい!」
そう言ってコロコロと笑ってる様子は、たしかに伊丹十三監督の映画に出てくる妖艶さはなく、水木しげるのほうが似合います。
座敷わらしも、出現する家が栄えると言いますからね。
「ほら。大学の時のサークルの先輩いたでしょ?」
大学時代の元彼は、駅前で看板を目にするような企業のひとり息子。父親はワンマンで卒業後は留学しろと命じてたけど、本人は英語が大嫌い。
海外に行くのも「なんかこわい!」って言ってた。笑
それがMと付き合って、留学も決め、会社を継ぐことも決意したとか。
「そう。すっかり立派な感じになって。人脈も広がって、いい留学先も見つかったのよね」
とはいえ大学時代、誰しもそういう転機は訪れる気もします。
「他の人もだよ。私と付き合うとうまくいくのよ。仕事が増えたり、出世したり、ブラック企業から転職できた、難関の国家資格に合格した、とかさ」
すべてが真実だとしたら。
それってつまり彼女がずっとそばで「あなたの才能を信じてる」「あなたはできる」と本気で心の底から言い続けてることで、彼らの自己肯定感が上がったからなんじゃないかと思うのです。
それが次第に行動や言動を変え、未来をひらく力になったんじゃないか。
いわゆる「あげまん」とか「運」というのは、このように説明可能な現象なのではなかろうかと感じました。
そして、そんなMの旦那さんが、若くして突然の脳内出血で倒れたという知らせ。
これでは、あげまんどころか、座敷わらしですらない。
あ……。
彼女はこうも言っていました。
「でもね、みんな運が良くなると仕事が楽しくなったり、オファーが増えたりして忙しくなるの。収入も増えるし、交友関係も広がる。モテるとかね。笑
オシャレになる、新居に引っ越すとか。バイクを買って、週末はツーリングに出かけるようになった彼もいたし」
Mは付き合っている相手に、何かを買ってくれとねだるのは苦手。
派手にお金を使わせるタイプでもない。
自分より、仕事優先にしてね、と言う。
放っておいても、ずっと好きで居続けてくれそうな雰囲気もある。
となれば、仕事や楽しいことに夢中になる男性陣の気持ちもわかる。
Mじゃなくて、もっといい女との出会いも増えるのかもしれない。
その結果、皮肉にもMではない好きな女が出来たとか、会えない日々が続いてMのほうが寂しさに耐えられなくなったとか、そんな別れを繰り返していました。
「大学時代の彼、私と別れたあと留学もやめちゃったの。理由はわからない。なのにすぐに彼女ができて結婚しちゃった」
当時はSNSで相手の近況が見られるような時代でもなく、風のたよりで知ったらしいですが、それには続きもありました。
「彼、離婚したって。なんか大きな病気にもかかったみたい」
その後の様子は知れない、らしい。
ほかにも聞けば、出世したのに勤め先が買収され居場所がなくなったとか、新しい彼女ができて同棲したのに1年ともたずに別れたとか、そんなこともあるらしい。
これもすべて元彼たちから直接聞いたわけではなく、風のたより。
真相はわかりません。
そういえば倒れたMの旦那さん、浮気してそっちと一緒になりたいって別れ話になってたよね……。
それってさ……。
「やめてよ。そんなことしない。人を呪わば穴二つって言うでしょ? 笑」
結局、倒れた旦那さんは命は取り留めたものの、半身不随に。
自己破産して、経営していた会社をたたみました。
「座敷わらしの出る家ってすごく栄えるけど、いなくなるとその家は没落するんだってね。だからみんな座敷わらしが出る部屋に、おもちゃとかお菓子を置いて、必死にいなくならないようにする。
でも思うの。
座敷わらしはおもちゃよりお菓子が欲しいんじゃなくて、ずっと相手にしてて欲しいの。それだけなんだけど、ね」
その後Mは離婚してシングルマザーとして一人息子を独立させ、現在は楽しげに暮らしています。
Muscat、いやMの場合、たまたまそういうことが続いただけなのでしょうか。
人生は山あり谷ありですから。
何はともあれ、元彼さんたちの幸せを心から祈っております。
※この作品はノンフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありますが、恐れることはありません。味方にすれば最強です♡