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女性ホルモンのような働きをするといわれている成分「エクオール」。エクオールは、大豆に含まれるイソフラボンをもとに、腸に住むエクオール産生菌によりつくられているといいますが、つくれる日本人は約半数。前回の対談に引き続き、完熟ライチ×マンゴーの検査結果を中心に、オレンジとマスカットも参戦。それぞれがエクオール対策を講じ、医療の観点から素朴な疑問を西岡先生にご回答いただきました!
マンゴー:師匠(※マンゴーとライチは昔の上司と部下)、私たちエクオールをつくれていない側の人間でしたね……! 私はレベル2でした。
ライチ:私はレベル1……。
私は片方卵巣をとっていて自分でも女性ホルモン少ないだろうな、と思っていたけど、エクオールもつくれないとは落ち込むものだね。
マンゴー:そっか、手術をしていましたよね。でもエクオールは女性ホルモン「のような」働きをする成分のようだから、生粋の女性ホルモンの量とはまた別のお話しなんですよね。
ライチ:そうだよね。そもそもの疑問なのは、エクオールがつくれないと何がダメなのかも知りたい。
マンゴー:たしかに。たぶん何もダメじゃなく、ただその事実があるのみだと思うのですが、大豆製品を摂ろう! という意欲はくじけますね。
ライチ:エクオールに変わらないのか~って悔しいよね。これはあくまでイメージだけど、エクオールをつくれている人の方が、なんとなく女らしい体つきだったり、性的に魅力的なイメージがあるんだよね。
マンゴー:その因果関係が気になる。チーム完熟の中ではマスカットさんが「レベル3」で一番エクオールをつくれている女だったわけだけど……。
マスカット:私、自分で言うのもなんだけど、見た目で女性ホルモンは少なそうじゃない?
だからこそ、女性ホルモンやエクオールとおっぱいとは関係ないことをしっかり伝えて、貧乳の光になりたい。
マンゴー&オレンジ:なってください(笑)。
マスカット:エクオールがつくれるかと胸の大きさ、体つきは関係ないと思います!
マンゴー:うんうん。でも、マスカットさんは恋愛で女性ホルモンを出そうとしてるでしょ?(笑)
マスカット:いやいやその説、意外かもしれないけど信じてないから!
よいのは瞑想ですよ!失恋しようがなにしようが、しっかり幸せホルモンが出せるようになるから。深い瞑想はセックスより気持ちいいと聞いて、そこを目指してる。
マンゴー:おお~新しいフェーズ~。
では、そのあたりの真偽のほどはどうなのか?西岡先生に聞いてみました!
マンゴー:まずこちら。
質問1:女性ホルモンが潤沢な人ほど、エクオールを産生できるのか?
西岡先生からの回答
まずエクオールは、大豆イソフラボンの一つであるダイゼインが、腸内細菌により代謝され、産生されるものです。
エクオールは女性ホルモンであるエストロゲンに似た化学構造を持ち、エストロゲン作用を示しますが、その活性はエストロゲンの1/1000~1/100程度とされています。
女性ホルモンは身体に備わっているホルモンであり、エクオールは大豆由来の成分が代謝されたものなので、2つはまったく別ものです。
また、「女性ホルモンが潤沢な人ほど、エクオールを産生できる」ことについては、専門家としては、エビデンスがないため回答しかねます。
ライチ:女性ホルモンと大豆+腸内細菌でできるエクオールという成分は、別物ということだね。
マンゴー:ですね。ふたつの相関関係も不明だと。
ですが、私たちのようにエクオールをつくれない人も、希望が湧く資料もいただいております。更年期障害に大豆イソフラボンは効くのかどうか。
西岡先生からの回答
産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017(日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会)の「更年期障害に対する漢方治療・補完代替医療はどのように行うか?」の項によると、
ホットフラッシュに対して、大豆イソフラボンなどを用いることは、「(実施すること等が)考慮される(考慮の対象となるが,必ずしも実施が勧められているわけではない)」とあります。
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001188/4/gynecologic_disease.pdf
また大豆には高濃度のphytoestrogens(ダイゼイン、ゲニステインなど)を含み、エストロゲン作用を示すと考えられており、大豆成分に関する臨床試験は数多く行われていますが、現在までのところ更年期障害に関する最終的な結論は出ていない、というのが実情であるとの報告があります。
女性医学ガイドブック 更年期医療編2019 (日本女性医学学会 編)より
ライチ:ふむふむ、現段階では大豆成分そのもので更年期障害が治療できるわけではないが、効果なしとも言いきれないという認識なんだね。
マンゴー:はい。断定はできないけど、効くかもよしれないよ、ってことですよね(笑)?
私はいい方に受け取ることにします!そして続く資料によりますと、エクオールは、更年期に有効のようですよ。
西岡先生からの回答
エクオールには次のような結果が認められています。
プラセボ対象二重盲検試験(RCT)において、エクオール10mg/日摂取の効果が更年期症状(ホットフラッシュの回 数・頻度、肩こりの程度)、閉経後の骨代謝(骨密度低下)、メタボリックシンドローム〔HbA1c、LDL-Cと動脈硬化指標であるcardio-ankle vascular index(CAVI)〕肌の老化(目じりのしわ面積率、最大しわの最大深さ)に対する効果が認められています。
効果が期待される摂取量としては、エクオール10mgにおいては動物および人での安全性データが揃っており、1日30㎎の接種を3か月続けても子宮内膜厚や腟細胞診、乳腺密度、甲状腺ホルモンに異常は認められていません。
女性医学ガイドブック 更年期医療編2019 (日本女性医学学会 編)
マンゴー
あらま、エクオールの方が効果がはっきりしてますね! 目じりのシワにもいいの!?
ライチ
大豆製品をたくさん摂るより、エクオールをダイレクトに摂取した方が近道ではあるようだね。さて、質問は続きます。
質問3:第二次性徴においては、女性ホルモンが作用して胸が膨らんだり、丸みのある身体になると思うのですが、更年期においても女性ホルモンが潤沢な人、またはエクオールをつくれる人のほうが、既存の女性らしい体のラインが保っていられる、髪や肌のうるおいを保っていられるなど、何か外見に影響が出るものなのか。
西岡先生からの回答
【髪について】
以下のような論文があります。
大塚製薬WEBより引用
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2020/20200424_1.html
閉経後女性における毛髪とエクオール産生能に関係する観察研究
日本美容皮膚科学会雑誌 Vol.30 No.1 「閉経後女性における毛髪とエクオール産生能の関係に関する観察研究」より
エクオールがつくれない人に比べてつくれる人で白髪が少なく、毛髪の「まとまり、ハリ・コシ」及び「ツヤ、光沢」の自覚が良好でした。以上の結果 は、閉経後の女性においてエクオールが毛髪の老化(密度の低下、軟毛化、白髪化)抑制に関与することを示唆しています。
岩下聡、宮川春菜、上野友美、浜本圭介、内山成人、植木理恵
【肌について】
年齢とともにエストロゲンが減少し、コラーゲンを生み出す力が弱くなってしまいます。
エクオール摂取により、シワ面積が減少したという論文があるので(Ouama A et al. Menopause2012,19:202-210.)影響はあるといえるでしょう。
ちなみに、女性らしい丸みを帯びたからだをつくるエストロゲンは、女思春期のころに胸を発達させますが、閉経後は、エストロゲンやプロゲステロンの分泌量が激減してしまうので、残念ながら乳腺自体は萎縮して小さくなってしまいます。
マンゴー:やはり、エクオールは髪や肌の老化を食い止める働きを期待できそうですね。
ライチ:そうだね、飲みたくなるね。続きまして都市伝説的ではありますが、こんなことも。
質問4:恋愛をすると女性ホルモンが活性化したり、女性ホルモン様作用が活発になったりするのでしょうか?
西岡先生からの回答
エビデンスがないため専門家としては回答しかねるのですが……(西岡先生の困り顔に一同笑)。生まれつきの体格や体質は一人ひとり違い、女性ホルモンの分泌量にも個人差があり、さらに、年齢よりも若く見える、キレイというのは、主観的なものなので、なかなか難しいものがありますが、恋愛をすると、相手のことを考えるだけで心がハッピーになったり、おしゃれや美容に気を配るようになったり、表情が豊かになったり、といった意味でキレイになるという効果はあるのかもしれませんね。
人生100年時代ですから、閉経するまでよりも閉経してからの人生の方が長いので、恋愛に限らず、ワクワクしたり、心がハッピーになれる生きがいや趣味を見つけることが大切だな、と我が身に置きかえて考えてしまいました。
マンゴー:なるほど~。医学的には都市伝説かもしれないけれど、恋をして引き起こされる効果には先生も納得といったところですね。いやあ、恋してみたいな~。
ライチ:女性ホルモンとの相関関係がますます気になっちゃうね。個人的に解明していきたい!
エクオールをつくれないと分かった完熟ライチとマンゴー。西岡先生によりエクオールの理解が深まったところで、それぞれが対処法を考案。この対談から1週間後、試行錯誤の結果をふたたび話し合うことになりました。さて、どんな案が出てくるのでしょうか。
次回実践編へ続きます!
メノ活ヒント!
【月経周期による乳房の変化について】
乳房には子宮と並んで女性ホルモンに対する感受性があります。妊娠をしていないときでも乳房は女性ホルモンの影響を受けています。子宮内膜の周期的な変化は、卵巣ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの変動によってもたらされます。プロゲステロンは、乳房の周期的な変化に最も影響を与えています。プロゲステロンは、排卵後に分泌される女性ホルモンで、水分をからだの中にため込む性質があります。(プロゲステロンが子宮内膜に作用すると受精卵が着床しやすいように水を含んだ浮腫状になります。)
プロゲステロンは、子宮だけでなく、乳腺にも働きかけています。プロゲステロンが乳腺に働きかけると、乳房も水を貯め込んだ状態になります。"乳腺と乳腺の間に水を含んだ浮腫状態"が起き、これがいわゆる月経前の"胸が張った"ように感じる正体です。月経前のバストアップは、実は、水分量が増えた"むくみ"でもあるわけです。