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Let’sメノトレ 特別編1 理学療法士さんに聞く!「メノトレ」真の目的 ~エクササイズの種類が多くて、何をやったらいいか分からないあなたへ~

メノトレ特別編1

「メノトレ」シリーズもvol.18を上梓し、メノ女の悩みにアプローチする方法も増えてまいりました。しかし、わたくしマンゴーはふと思ったのです。メノトレを紹介している身であるため、実際にエクササイズを行ってはいるのですが、「全部のトレーニングを習慣にはできない……多すぎる」と。

無理のきかないメノポーズ世代にとって、いったいどのようにメノトレを取り入れていけばいいのでしょうか。いったん立ち止まって、監修をお願いしている理学療法士、浜野久美子さんに率直にお伺いしました。

「どんな身体になりたいか」ゴールを決まると、手段がわかる。

マンゴー「浜野さん、私はメノトレvol.8の下腹部トレーニングと、vol.15の汗かこうトレーニング初級編は続けているのですが、そのほかのメノトレは……やめちゃいました。全部できませーん(涙)」

浜野さん「それはできなくて当然だと思いますよ(笑)。まずはメノトレで運動をすることによって身体にどんな影響があるのかを知ってもらうことが大切だと考えています。」

マンゴー「影響とは……下腹部トレーニングをしたら、実際に下腹がへっこんでウエストがきつかったズボンを穿けるようになりました。ということですか?」

浜野さん「そうです、そうです。一度実感してもらえれば、また今後必要になったときに引っ張り出してやればいいですよね。普段、リハビリに関わっていろいろな患者さんを見ていますが、今の身体に必要な運動を自己管理できる方が、健康を維持できる印象があります」

マンゴー「ほほう、自己管理とは?」

浜野さん「健康になるというゴールを明確に持っていて、これまでの運動をおこなった成果を把握している、そして今の自分に何が必要なのかを理解していることですね。自己管理できている方からは『もう少し脚の筋肉を強くしたいときは、どんな運動をすればいいですか?』と質問をいただいたりするんですよ。」

マンゴー「なるほど、自分で自分の身体の状態を把握していて、何が足りていて何が足りないのかを理解しているということですね」

浜野さん「はい。言われた運動をやっているだけだと、運動自体が目的になってしまって、続かないこともあります。それでもいいのですが、自己管理できる方はその先のゴールを目指しているので運動も続きやすいんですよね。」

マンゴー「そうか、目的は運動ではなく、健康になることか。私は運動することが目的になっていたこともありますね。」

浜野さん「目的は人によりますが、なりたい自分になるというゴール設定が大切だと思いますよ。」

マンゴー「私は下半身がスッキリした不調のない自分になりたいです!」

浜野さん「いいですね。手段はたくさん持っていた方がいいと思いますので、一連のメノトレを一度やってみて、合う・合わないを確かめてから、その都度選んでいきましょう。」

マンゴー「自分でカスタムしていくということですね。」

浜野さん「そうですね。身体の変化に自覚的であることが、達成の第一歩だと思います。個人的にはゴールへ向かう手段がもっとあってもいいのではと思っているので。」

マンゴー「もっとあってもいい手段というと?」

浜野さん「これまでの経験から、個人的には身体的介入だけでなく、心理的介入も重要と考えています。メンタルのサポートも広義のリハビリだと思っているんですよね。」

マンゴー「たしかに、行動と心理は密接にかかわっていますもんね。怪我や病気からの心身回復もしかり、ある程度元気な状態から始める”なりたい自分”達成のプロセスにもあると良さそうです。今後のリハビリ界に期待です。」

メノトレ、効果が感じられなくなったら?

マンゴー「あのう、メノトレvol.8の下腹部トレーニングを続けたおかげで、ウエストがきつかったズボンが入るようになったのですが、そこからあまり変化がないんです。もっと下腹をひっこめてくびれさせたいのですよねえ。目立った成果が出ないからサボり気味になってしまって……。」

浜野さん「変わっているという実感が得られないと、やめちゃいますよね。マンゴーさんはおそらく、これまで使えていなかった下腹部のローカル筋(いわゆるインナーマッスル)を稼働させられるようになったのかもしれません。」

マンゴー「やった~!」

浜野さん「ただ、ウエストをくびれさせる、などのボディラインは、グローバル筋(いわゆるアウターマッスル)と呼ばれる筋肉も必要になってくるので、ローカル筋(いわゆるインナーマッスル)だけ鍛えていても変化が乏しくなってしまうんです。」

マンゴー「ローカル筋とグローバル筋……それって何でしょうか?」

ちょっと専門定期な筋肉のよびかた
医学的にはインナーマッスル・アウターマッスルという表記はせず、ローカル筋(ローカルマッスル)グローバル筋(グローバルマッスル)と呼びます。これらは各筋の存在する位置や付着場所によって分けられています。

1. ローカル筋:腰椎に筋の付着を持つ深層の筋群。関節の安定性を高める筋肉。腹横筋、(内腹斜筋)、多裂筋など。

2. グローバル筋:浅層の筋群。運動方向をコントロールする筋肉。ローカルマッスルに比べると筋の大きさ(長さ)が大きい分、大きな力を発揮できる。腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋群など。

一方で、筋肉を機能的に分ける考え方がインナーユニット、アウターユニットです。
a) インナーユニット:腹横筋、腰部多裂筋深層繊維、骨盤底筋群、横隔膜が該当。体幹、骨盤帯の安定化に寄与。
b) アウターユニット:浅層筋群。体幹と四肢(手脚)を連結させて身体のバランスを制御。

インナーユニットが活動することで体幹、骨盤帯の安定性が高まって、アウターユニットが適切に働くことで四肢が運動を円滑に行うことができます。体幹と骨盤帯は、インナーユニットとアウターユニットから成っています。


マンゴー「一般的にいわれている呼び方と医学的な名称は違うんですね。ついでに「体幹」とは何でしょうか?メディアによって定義が異なっているような気がします。」

体幹とは
エクササイズの記事を読むと「体幹=お腹まわりのローカル筋」のようなイメージを持ってしまうことがありますが、実際には(頸)胸部、腹部、背部、臀部といった胴体がつくられている骨格、筋肉、内臓すべてを含めて体幹と呼びます。

マンゴー「なるほど~、体幹は胴体全体のことなんですね! そして、ローカル筋(インナーマッスル)だけではボディラインは変わらず、グローバル筋(アウターマッスル)の変化が必要だと。」

浜野さん「はい、グローバル筋はローカル筋と連動して働くことで、より体幹の機能を高めることができので、ボディラインにアプローチできると考えています。」

マンゴー「へー、じゃあそっちも鍛えなきゃいけないのですね。グローバル筋も10日くらいで成果が出ますか?」

浜野さん「既存のあまり使っていなかった筋肉を使えるようになるという目的では、グローバル筋もローカル筋同様、早い方で1週間~10日ほどで効果が現れ始めると思います。ローカル筋とグローバル筋の両方をバランスよく鍛えることが大切ですね。」

マンゴー「そうか……だとしたら私は、次に違う種類のメノトレを選べばいいのか!」

浜野さん「そうかもしれませんね。メノトレvol.6の『おしり上げ』は体幹のローカル筋とグローバル筋、さらに下半身も鍛えられますよ。」

マンゴー「いいですね!ではそちらにチェンジしてみます。洋服を着替えるようにメノトレもかえていけばいいのですね。」


というわけで私は、怠け気味だったvol.8の下腹部トレーニングを下半身全体に効くというメノトレvol.6の『おしり上げ』に変更して、試してみることにしました。これまでとは違う部位が鍛えられて身体が変わっていくかもしれません。身体が変化したら、ゴール達成の材料として身体感覚を記憶しておこうと思います。

みなさまも、必要に応じてメノトレを選んで替えて、ご自分の「なりたい身体」のゴールへ近づいていってくださいね。今後も簡単で効率的なストレッチやエクササイズをご紹介していきますのでお見逃しなきよう、よろしくお願いします。


参考文献:
ローカル筋とグローバル筋
https://www.u-bunkyo.ac.jp/center/library/image/hst2010_007-012.pdf(1枚目)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/22/1/22_1_1/_pdf(2枚目~)

筋力増強
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/54/10/54_740/_pdf(5枚目~)

体幹について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptcse/20/1/20_7/_pdf
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/core-training.html



監修:理学療法士 浜野 久美子

チーム完熟・マンゴー(ライター)

「チーム完熟」の下っぱ特攻隊長。厄年以上、更年期未満の1979年生まれ。フリーランスコピーライター / 唎酒師 / 2児の母 / 2021年5月に離婚。2020年末あたりから謎のめまいが頻発し、その原因を突き止めるべく病院をめぐる。2021年現在のストレス点数は685点(※300点以上で翌年に健康障害が生じる危険性80% 出典:夏目誠・大阪樟蔭女子大学教授提供より)。
執筆note 「完熟5(かんじゅくふぁいぶ)」

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